2019年5月5日

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本日は「シナモン」の4回目の公演です。
初日から再演という繰り返しではない公演を目指しています。
 
私は小説からダンスを作る経験を長く積んできましたが、なぜ言葉
とダンスの関係に興味があるのかというと物語としての言葉のみな
らず自分の側にある言語感覚をダンス創作に冒険させ、その先にあ
るであろう言語を超えた感覚世界が表れてくる、そこに向かいたい
のです。
原作の抜粋の朗読を用いる方法も独自のやり方で編み出しましたが
、身体自体が鍛えられた的確な力を持っていなければ不可能です。
概念や理解という範疇からはみ出してしまう不確実な運動性を解き
放ちたく、舞台、公演日時などの限定条件内でこそできうる冒険が
作品になると考えます。言葉と身体存在そして動き、言葉と音楽、
言葉と照明の関係が複雑に繊細に大胆に絡むことによって表出され
た内容こそが作品だと考えます。でも誰が正しいと判断するのでし
ょう。
そこには何の保証もないが目を見開くことが必要なのです。原作へ
の強い共感が元素ですが、それを私は作品を作ることによってしか
知り得ません。原作者シュルツとの出会いは未知への共感です。
非現実的だが具体的感情を呼び覚まし、具体性の中に神秘を感じる
注意深さへの親密感。そこに手がとどかない深い影に向かう時、緊
張や恐れは私の体内で美に変容し予期せぬ喜びにまで高まります。
 
「シナモン」をご覧になる方が、各人の内側に湧き上がる独自の感
情的冒険をして、そこに何かしらの開かれる世界があればと思いま
す。
 
両国のシアターX(カイ)にご来場ください。
                        勅使川原三郎
                     [メールマガジンNo.1340より]

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