2019年7月14日

1922
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昨日は、「幻想交響曲」の初演初日でした。
 
雨にもかかわらず大勢の方にきていただきました。ありがとうございました。
 
この曲は、私が若い頃から長年聴きつづけてきた音楽です。一般に標題音楽と呼ばれる一楽章ごとにタイトルがついている、ストーリーではないのですが、楽章ごとに意味がある曲です。創作や恋に悩む若い芸術家の揺れ動く内面を主題にしたもので、それ自体が作曲家ベルリオーズ自身を描写しているとも言われています。
 
私はこの曲を10代の頃から聴き、その数年後にはテレビでタイトルは忘れてしまったのですが(多分同名の)映画を見たことがあります。古いフランス映画で主役の作曲家を若きジャン ルイ バローが演じていました。
 
その後もこの有名な曲をことあるごとに稽古場でかけては一人で踊っていましたが、長年の思いが叶い、去年リヨンのオーケストラ演奏で踊ることができました。もちろん佐東利穂子とのデュエットです。来たる秋にはパリのフィルハーモニーでも踊ります。その前にアパラタスで上演できることはとても嬉しいことです。
 
公演後の実感を書きます。この曲の起伏の激しい豊かな情感表現と異常な世界観が強烈に身体に衝突し我々踊る身にとっては引き下がれません。格闘し融和し、妥協無しの音調は終わりのない日々の延長のような道のりを用意された我々が向かうのは試練か稀有な陶酔か、音楽と心中するようでもあります。毒に犯されながら生きつづける人間の矛盾に火を放った後、不死に向かう命を得るために絶望の際を全速力で走り、足を踏み外して真っ逆さまに飛翔する。
 
本日の2日目の「幻想交響曲」にどうぞご来場ください。
                            勅使川原三郎
                        [メールマガジンNo.1410より]

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