アップデイトダンス
No.111 − No.115

日程 2025年10月25日ー11月3日(8回公演)
演出. 照明:勅使川原三郎
アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子、ダリオ・ミノイア
「記憶と夢」
箱の中のミニチュア宇宙 不機嫌な記憶 夢の力 見知らぬ星から人間
過去を失った宇宙人 人間に戻りたい宇宙人 宇宙人に戻りたい人間
宇宙人は人間に 人間が宇宙人に成り変わる ここにいるのは誰
今を無くした昨日の人と明後日の人 ここからここへ 記憶と夢の箱
勅使川原三郎
No.114「紫日記」
日程 2025年9月6日−9月18日(10回公演)
原案/振付/出演:佐東利穂子
演出:勅使川原三郎
「紫日記」
紫はもののあわれ 雲に隠れた夜半の月
過ぎ去った君の面影 目を閉じて思う間に
私ではないものになり 君ではないものになり
魂を失いすべては消えゆく 雲は千切れ月が残る
No.113「静か」
日程 2025年7月19日−7月31日(10回公演)
演出. 照明:勅使川原三郎
アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子
「静か」
沈黙のダンス 無音の1時間
湧き上がる沈黙
盲目のような静けさ
沈黙が生まれつづける身体
時を超え空間を超えて
静止の動きに静かがやってくる
終わりなき沈黙のダンス 未知のダンスの領域へ
勅使川原三郎
No.112「電気の夢」
日程 2025年6月21日−7月3日(10回公演)
演出. 照明:勅使川原三郎
アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子
「電気の夢」
ガストン バシュラールの「夢想の詩学」の頁から飛び出した私は自身の
古典的思考をさかのぼることになった。詩は生命の内側と外側の呼吸で、
彷徨する身体と精神は実に軽やかに翼を広げ飛翔する喜びに身を投げ出した。
勅使川原三郎
No.111「悲しみのハリー」
日程 2025年5月24日−6月5日(10回公演)
演出. 照明:勅使川原三郎
アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:佐東利穂子
「悲しみのハリー」
死者ハリーの再生 望まれない復活 叶わない愛
不可能の愛 不可能な生と死 死者は2度死ねない
結晶化する愛 - 生命の矛盾 - 宇宙的悪夢
ダンス生命体 - 佐東利穂子の宇宙的極限ダンス
勅使川原三郎
佐東利穂子は、身体強度の極大から極小までを自在に行き来できるダンサーだ。単に筋力とかテンションの問題ではない。その質感を自在にコントロールできるということ。これはプロのダンサーでも、できるようでいて、なかなかできることではない。佐東は、それをすんなりと体現できてしまう稀有なダンサーだ。
佐東は、この「雲間に隠れる夜半の月」のように微妙に変化する勅使川原三郎デザインの照明の下、「もののあはれ」の情感を身体で綴っていく。儚い哀愁が大気の中に漂い、劇場空間がその意識に染まっていく。
大気に溶け込んで、空中に漂うような身体。空気となった佐東利穂子のダンスは、まるで同じ劇場空間の中にいる観客もろともに、一つの身体を共有してしまったかような感覚がある。いや、劇場そのものが一つの生命体になってしまったと言った方が良いかもしれない不思議な感覚。(中略)既存のダンステクニックではない、存在で語る身体。
ー堤広志氏(舞台評論家)
闇を味方につけている
赤い衣装の冒頭と次に横たわる姿があまりにも美しい
白い衣装になり絶妙な光とともに身体が浮かび沈む
その照明と音楽も魅力的かつ佐東の特徴の一つの伸びやかな動きが動かずにも感じられる
「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬまに雲がくれにし 夜半の月かな」紫式部
発想の元ということだがそこにとどまらない
佐東の広がるイメージが闇の中に浮かび上がり
1時間余り夢幻的な世界に浸っていた
ー志賀信夫氏(批評家) *『TH叢書』No.104掲載予定
冒頭、赤(紫ではない)の透けた薄物を羽織り、佐東が床で密やかに動く。様々な古典技法によるのと同様、勅使川原メソッドによって作られた身体である。その緊密な体、音楽との交感、衣裳との対話に、充実の身体空間が生み出された。(中略)音楽と動きによる静かな時間を味わうことができた。赤い薄物を脱ぐと、白い生成りのワンピース(靴は黒)。上は横ドレープ、スカートは張りのあるフレア。脱ぎかかる時の白い背中が、強いフォルムとなって目に焼き付く。美しいトルソーのようだった。バイオリンとピアノの曲(メシアン)による立位の踊りでは、佐東の体を音楽が通り抜ける。その優れた音楽性を改めて確認した。(中略)佐東の思考をじっくりと辿る貴重なひと時だった。
ー児玉初穂(舞踊評論家) *ブログ「舞台の謎」より