Works / 活動紹介

IZUMI

佐東利穂子 初振付作品
 
振付・音楽構成・照明・衣装・出演 佐東利穂子
 
照明技術 セルジオ・ペッサーニャ
衣装製作:武田園子(ヴェロニク)
 
上演時間:60分
初演:2019年6月 パリ日本文化会館
ギャラリー
レビュー(抜粋)
森岡実穂 (中央大学准教授・オペラ演出批評)
舞台上手奥に置かれた、佐東の身長よりもすこし高いところまで届くサイズの半透明の「流れ落ちる水」は屹立する柱のようでも樹の幹のようでもあり、これに絡んでいく佐東の姿には樹になっていくベルニーニのダフネを連想。床に座り光と影の境を見つめる姿にはダリの水面を見つめるアドニスを。むき出しの腕と脚、そして汗、常よりも生々しい身体を提示しつつも、どこか神話的な神秘性を保つ。半透明の「水」の背後に立ち、光を抱きしめるような、霞の中に姿をぼやけさせていくような。最後の溶暗の素晴らしさ。
森菜穂美(ライター)
特に象徴的な泉のオブジェの使い方、後半の照明のなんとも言えないおぼろげな美しさには心打たれた。中盤のチャイコフスキーでの踊りから、終盤の佐東節ともいえるあのしなやかで立体感、スケール感のあるダンスには酔わされる。
村山久美子(舞踊評論家)
冒頭の氷が解け水中で何かがたゆたうようなゆったりとして柔らかい、スピードをセーブした腕の動きが素晴らしい!そして、続くシーンは、静謐を湛えた泉に美しいニンフが現れたかのように幻想的。
北川健次(美術家)
佐東さんのダンスには、空間を切り開くような何か大きな遠心性と、一方で、極めて緻密で繊細な求心性が同時に感じられ、その二元的なものが相乗して、名状し難い独自的で不思議なマチエ―ルを醸し出している
ラストの一瞬が見せた(或いは魅せた)溶け込んでいくような表現は、実に艶なる効果を放射して、我々観客の、えもいわれぬ感動を鮮やかに立ち上がらせました。
児玉初穂(舞踊評論家)
両腕を広げてのぞき込む佐東の姿が、逆さ富士のようなシンメトリーを形成した。概ね、勅使川原三郎の美意識と重なっているが、重なっているからこそ、佐東の個性が浮き彫りになる。
音楽との関係、インスタレーションとの関係が親密で、触覚に基づいている点が、佐東の大きな特徴。佐東はその場で音楽と呼応し、インスタレーションと対話しているように見えた。バッハの荘厳な曲で踊る高速ダンスは、全身の呼吸を伴い、空間に気を充満させた。勅使川原作品で見せる聖性を保ちながら、一人の人間としての思考、それに由来する強度を感じさせた初振付作だった。