【記事抜粋】
”バッハの「無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ」がくっきりとした輪郭を描くなか、ダンサーたちが舞台を左右に走りぬける。どんな思考も解釈も追いつかぬ速度感。時にバッハ特有の密な構築感から遁走し、時にその張りつめた空気に拮抗するかのように。(中略)佐東含め、勅使川原が自らのカンパニー「KARAS」で育ててきた若手の5人は、学んだことを開示するという段階を通り越して、動きが体の核から湧き出ている。彼らの大きな成長を物語る。(中略)
言葉をはるかに超え、人々が共有できる世界が本当にあるのか—。
そんな難題に、勅使川原というひとりの舞踊家が正面から向かい合い、繊細な手つきでひとつの答えを手繰り寄せた。そのラストシーンには、覚悟と真情がにじみ出ていた。” 石井達朗(朝日新聞2011年6月2日)
”人間が宇宙を構成する原子から成るという宇宙との一体感や、その原子は死によって肉体が崩壊しても宇宙に存在し続けるという永遠性を語るように思われる、近年の勅使川原の創作が、今回、多くの人々の悲しみを含んだことにより、日本の現実とぴったり共振する強烈な語りの力を持った。(中略)これらの踊りは今痛いほどにリアルで、宇宙的レベルの永遠性という真実に向き合えなくなるほどに切迫感がある。(中略)身体表現の大きな力を、改めて実感した公演だった。” 村山久美子(読売新聞2011年5月10日)
その他、ダンスマガジン2011年8月号にも記事が掲載されています。