2018年5月4日

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「調べ」初日。とても良い公演だったと私は感じています。

ここから多くのことを考えて、公演時の感じたこと以上の

大切なものを得たいとすでに、貪欲な私は思っています。

公演は一過性のものではなく、まるで種まきのように、

水をやり陽にあてて注意深く付き合うのです。その後の

世話の仕方によって、大事にする手つきによって育てる

べきものから的を外してはならないと私は考えています。

 
私と佐東利穂子、このふたりは数多くのデュエット作品を

踊ってきました。今回の新作「調べ」もデュエットですが、

共演者として笙の演奏家、宮田まゆみさんとのトリオと

言ってよいでしょう。今回はいままでの演奏家とのライヴ

公演の際に行われるリハーサルよりも多くの機会を得まし

た。その場その時の演奏が変化する様は特殊で、聴覚的

音響より時間の変容と言える経験でした。

全く無音で踊った「静か」の時とも異なった音の経験で

した。

しかし笙の演奏が主でも、ダンスが主でもない関係こそが

重要と私は考えています。

音楽と身体の動きの双方が、作り上げる「事実としての非

日常性」、それこそが芸術です。

 
何かが昨日始まり、そして今日、それが成長する。

私たち人間の生は、そんなものではないでしょうか。

いや自然の全ては、そのように始まり、成長し、いつ果て

るかもしれない成長をつづけようとし、ある時、それが

途絶える時を迎える。

私は、この「調べ」という作品が私の他の作品と同様に

生命を得たのだと、喜んでいます。

公演とは、作品とは私にとって誕生した新たな生命なのです。

 
二日目の「調べ」の公演にどうぞご来場ください。
                      

                     勅使川原三郎
                     2018/5/4
                     [メールマガジンNo.1055より]

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