変わりゆく変わらないもの

9周年記念 公演歴一覧_確認用-03
この3年間、海外渡航が許されず私たちKARASの活動は限定されたものとなりました。1986年以降約40年近く、年の3分の1あるいは半年を海外で活動してきましたが、この3年は異質な日々を過ごすこととなりました。国内公演の充実に力を注ぐこと、特にこのアパラタスでの創作と公演が極端に増えて、それまで以上の新作が生まれました。これは創作好きの私にとってうれしいことでした。自由に創作することはダンスを学ぶことを基礎としますが、私たち独自のダンスの方法を研究するためにも長く費やされる時間は何よりも貴重なものでした。それゆえに作品に向かう姿勢も鍛えられました。考えることと身体を研究することが、古から問われる現代という不可解な価値と現在に通じる古典的価値との見極めと葛藤とを稽古をすることによって思考しつづけた日々は貴重でした。今年の春から海外公演が再開されました。まずは4月にパリのフィルハーモニー・ド・パリでバッハの平均律の公演、そして6月から2ヶ月間に「オフィーリア」「トリスタンとイゾルデ」「ペトルーシュカ」の3作品の公演の他に教育プロジェクトや将来の創作プロジェクトのリサーチをしてきました。その全てが、アパラタスから発生しました。この小さな劇場空間が、広々と羽を伸ばして飛び立ち、異国上空を飛び回っています。その清々しい飛翔は、この地下2階の皆様がお座りの暗闇から発しているのです。なんとありがたく、うれしいことでしょう。
私たちはこのアパタラスを皆様と共に磨いていきたいという気持ちを新たにしています。
丁寧に、大切に、大胆に、力の限り。
勅使川原三郎
2022年8月

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