2018年10月18日

私と佐東利穂子は「トリスタンとイゾルデ」の公演のためにモスクワにいます。明日明後日の公演後、東京に戻ります。
 
今年の後半を簡単に振り返りますと、、、
6月から北欧に長期滞在してバロックオペラとダンス作品の創作上演を終えて帰国直後、私は真夏のアパラタスでの「火傷の季節」公演をしました。その時、佐東利穂子はフランスでモンテベルディの曲で踊ってましたが、東京に戻ってから、アパラタスで「幻 - ファンタスム」がありました。
9月中旬にフランス、リヨンでリヨン交響楽団とベルリオーズの「幻想交響曲」を共演しました。 (このプロジェクトは来年秋にパリのフィルハーモニーで再演します。)

その後、パリに移動してシャイヨー劇場で「白痴」のヨーロッパ初演(アパラタスと同様に8回公演)しました。これがとっても素晴らしい公演がつづき、またまたアパラタスで誕生した作品が、生き生きと成長していることを深く実感しました。様々な媒体の反応もとても良く作品が、私と佐東利穂子にとっていかに重要で価値が高いものであるかを自覚しました。

東京の公演と同様に、単なる身体表現のダンスではなく観客の方々が文学的内容も含めて内面の深いところに達するまで作品から発したものを受け取ったようです。公演後の批評だけでなく、多くの観客が直接私たちに語りかけてくれたのは、感情を揺さぶられたことと私たちの独自の身体と動きがダンスとして類のないものだということでした。
パリを離れて、次はイタリア、ミラノに移動して佐東利穂子のソロ作品「SHE」の公演をしました。
これも彼女の全身全霊を込めたダンスは特別な輝きを発しました。
様々な角度から内面と身体の動きが反射するように輝き、時に沈殿する存在が予兆を許さない展開によって素晴らしい1時間を作り上げました。
公演後の鳴り止まない拍手と歓声、楽屋に戻ろうとしてもまだまだおさまらない 拍手に何度もアプローズを繰り返しました。
その公演直後には車で次の公演地フェラーラに3時間かけて移動しました。
作品は「白痴」です。ここでの「白痴」はまた新たに成長したように感じる出来でした。東京そしてパリ同様、あるいはそれ以上に何かを見出していくように思えてなりません。
 
 
そして今、私はモスクワにいて思うことがあります。
以上に書き連ねている出来事は、
事実であり一夜一夜が全く新たな出来事や出会いの大事な時でありました。
私は私たちが成し得た成果を自慢気に書いているのではなく、皆様が来られてご覧いただいたアパラタスで公演の直後の私たちがマイクを持って話しました公演後の変わらぬ生き生きとした実感を伝えさせていただいたのであります。
繰り返しますと、アパラタスでの公演の価値は、今日々まさにアップデートしているのです。
そのことを私は伝えたいのです。1日1日を大事に生きる、と同様に一回一回を大事に公演する。
それがそのままヨーロッパでも、なんの力みも装いの変えもなく、全く荻窪にいるがごとくのびのびと公演できる喜びを日本に東京に荻窪におられる方々と共有したいと実感しています。
 
モスクワでの「トリスタンとイゾルデ」の後、東京に戻り、すぐに秋田に移動して「白痴」を公演します。それも今から楽しみです。
 
皆様、お元気で、
また荻窪 アパラタスでお会いしましょう。
                                         
                             勅使川原三郎
                            2018/10/18
                         [メールマガジンNo.1159より]

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