2017年8月26日

昨日は東京芸術劇場で現在上演中の「月に吠える」の2日目でした。
萩原朔太郎の詩と勅使川原三郎のダンスが作った独特の詩世界。
まさに月が空に出たように、暗闇の世の地面から昇って現れました。
身体が言葉を受け取り劇場空間の表現に昇華されることは簡単な
仕事ではありませんが、私と仲間たちはギリギリまでの知恵と体力を
駆使して困難に挑みました。
いままでに知っている事と知らない事、つまりダンスによって接近し
ダンスによってつかみ取り、ダンスによって感覚世界にとどまらない、
開かれた世界を目指しました。
内的な力が外側に向かうダンスと詩の力によって私たちはより大きな
喜びを共有できます。それは朔太郎が幾度となく記した懺悔ということと
必ずしもかけ離れてはいないと私は日を増すごとに強く感じています。
ヨーロッパからの2人のダンサーもKARASのメソッドを学んでいて
共有する世界は同じです。そして鰐川枝里は登場場面に重要な流れを
生み出しエネルギーを増産しています。身体的基礎から成長し、
内的な気持ちや感情の揺れを経て、彼らの「謙虚」が向かうものは、
ダンスする喜びです。
この作品でも佐東利穂子はダンサーとしてまたひとつ上の段階に
成長しています。作品の芯をなす背骨を彼女が受け持ち、
私が全体性を統括していると言ってよいでしょう。
佐東利穂子自身が踊っている姿は詩が生れでる瞬間の誕生のようです。
萩原朔太郎という詩人は、私たちに詩を考えさせ、詩を書かせている
と私には思えてならないのです。
なんと面白いことでしょう。
今日は「月の吠える」の3日目です。
公演をすることは、新たな詩に出会うことでもあります。
どうぞご来場ください。                       
                         勅使川原三郎
                       [メールマガジンNo.885より]

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