私たちは、リンカーン センター フェスティバルに参加し
「スリーピング ウォーター」のアメリカ初演の為にニューヨークに
滞在しています。以前、東京芸術劇場で創作した「睡眠」から
発展した作品で、今年フランスで世界初演した後、
パリオペラ座の稽古場やニューヨーク シティ バレエ団の稽古場
を使用する好意を受けながら、この作品は準備され辿り着いた
ニューヨーク公演です。
昨日が初日で、素晴らしい公演になりました。
幕開きから終演まで、静寂と大音量の激しくも繊細で清楚ですらある、
場面の連続に出演者と観客は一体となった感があり、作品は
湧き上がるように成立していきました。振付、装置、照明、
そして出演など全ての舞台表現を担当している私自身が
このような言葉を並べることは適切ではないとお考えになる方が
おられるかもしれませんが、これはどうしようもなく
申し上げたいことなのです。
これぞ、KARAS!これぞ、勅使川原の世界でありました。
出演者も最高の出来でした。
しかしなによりも誰よりも佐東利穂子のダンスは圧倒的でした。
こんなダンサーは他に決して存在していないほどのレベルにあると
確信と共に叫びたいほどであります。実際に終演後、
拍手と歓声は強烈でした。作品の内容を的確に受け取り、
そしてダンスとして大いに喜びを共有した我々出演者と観客とが
正直に向き合うことで成した成果です。
そして今日が2日目で、初日にも増して良い公演で、
初日同様いわゆるスタンディングオーベーションでした。
ニューヨークのダンスの観客は手厳しいことで有名ですが、
私たちには荻窪のアパラタスの観客の皆さんがいて、
日々皆さんに鍛えられている自負があります。
そして当然のことなのですが、「人間はそのひとがもつ実力以上
のことは成しえない」という基本に立っていえば、
逆に今回の成果は当然のことであります。
日々の生業こそが全て。だからこそ、
私たちは簡単にアパラタスの仕事はできません。
日々の積み重ね以外にやりようがないほど、
明快に現実そのものを突きつけられ、突きつけるのです。
「スリーピング ウォーター」には「睡眠」にも出演した
オーレリ デュポンさんも出演し、他に「月に吠える」にも出演する
キアラ メツァトリさんと東京バレエ団の岡崎君も出演していました。
もちろんKARASの鰐川枝里と加藤梨花も。
ああ、それにしても佐東利穂子は素晴らしい。
彼女はこれから増々成長しより高いレベルのダンサーとして
成長をつづけるでしょう。
いやいままで存在しなかったほどの高みまで彼女は伸びてゆくのが
見えるのです。それほど今後の彼女には期待を感じさせる公演でした。
ヨーロッパに於いて、来年再来年と振付家として
創作の依頼がつづいている彼女は、舞台芸術家として世界中から
求められる人物になるでしょう。
明日が3日目の公演です。
世阿弥がいう、「その時、その時の初心を心して」
作品を活き活きと生かす為に最善を尽くします。
今回の作品内容については、後日追って書きたいと思います。
勅使川原三郎
[メールマガジンNo.844より]
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