2017年6月30日

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「静か」は4回の公演を終えました。明日から後半4回公演が始まります。
初日以来、日々とても意義深い公演を経験しています。
 
私と佐東利穂子は、この作品から多くを学び成長していると思います。
それはダンスのことだけではなく、様々なことと接する機会でもあります。
音がない、「無音」は音が無いのではなく、逆に音への注意深さが増し
聴こえる世界が広がることでもあるのです。
同時に「見る」ことがより鮮明になり、細やかな動き(位置移動も)
が拡大されるようになります。様々な感覚は具体的に実感を重ねます。
重ねるとは、時間と身体が密に触れ合うことの実感です。
皮膚感覚が鋭敏になり、鮮明な知覚が得られるのです。
不思議なことは一切無く、全ては事実として進行する経過を
活き活きと感じられるのです。
 
「静か」は無音を利用して踊るのではなく、踊る、動くことによって
無音を生じさせるのです。微かに静かに湧き上がる無音、或は沈黙。
湧き上がる流れ、晴天に現れる雲や消えていく雲のように
刻々動きつづける新たな時、新たな生命、私たちの身体の中に生まれ
つづける生命の喜び沈黙の喜び、よく見えなかった物が見えてくる
「静か」に活き活きとした力が湧き上がる。
私たちは、沈黙の中にダンスの喜びを感じています。
なぜなら身体と場所と空気が命を有した動きを生み出すからです。
私と佐東利穂子は、それをダンスと呼ぶのがうれしいのです。
「静か」は大いなる喜びです。
無音で踊ることは我々の独自の創作です。
私たちは決して手放さないと強い思いでダンスに向かいます。
 勅使川原三郎
                       [メールマガジンNo.831より]

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