久しぶりのメールマガジンです。長い間のご無沙汰でした。
私たちは現在ヨーロッパツアー中で、初めがイタリア、北部トリノ
(フットボールのユベントスで有名)のフェスティバルで
「Bones In Pages」公演しました。何百という本とおびただしい数の靴、
分解されたテーブルや椅子そして生きたカラスが一羽で構成された
インスタレーションの中でダンスする作品です。
9月に東京芸術劇場で公演した「up」では美しい黒馬が出演しましたが、
そのかなり以前の作品「Raj Packet」では巨大な牛ホルスタインが2頭、
両親ヤギと生後5日の子ヤギの家族、20匹の白ウサギ、
10匹のアヒルが登場しました。「Bones In Pages」のカラスも
公演する当地で調達したとても良い格好の美しいカラスでした。
ダンスは激しさと緩やかさが交錯するインスタレーションと身体とが
一体となるダイナミックな展開で、時間がイメージから独立した作品です。
その次はスペインのアンダルシア地方のセビージャ
(フットボール日本代表の清武選手が所属)に移動しました。
公演作品は8人のダンサーのグループ作品「鏡と音楽」です。
招待してくれたディレクターとは1989年以来の付き合いで、
過去に5作品を上演してきました。そして今回の「鏡と音楽」も
以前同様にとても素晴らしい観客からの支持を受けました。
どういうものかというと通常の盛大な拍手やブラボーなどのかけ声から
じょじょに観客が自然に3拍子のリズムを刻む拍手に変わっていき、
それが劇場全体を覆い響き反響して素晴らしい音楽に変化していきました。
まさにフラメンコの土地ならではのリズム感で、
自然発生的にリズムが起こりそのリズムが微妙に変化していく様は
鳥肌が立つほどでした。以前もこのような3拍子のアプローズを
もらいましたが、ディレクター曰く、一年に2回しか起こらない観衆の
反応だそうです。ダンスは特に佐東利穂子の上質な踊りは
ますます磨きがかかり輝くような音楽を生み出す全身が伸びやかにしなり、
妥協のない制御が超高速から繊細な静止へと移行し異次元の舞踊的身体の
展開を実現していました。自意識から離れる美しい姿が起こす通常の
人間性という肌合いとは異なるダンスに自在に変容する表面を示しました。
そして昨日、アルプス山脈のフランス側の湖畔の美しい街アネシーに
移動してきました。ここはすでに冬の様子です。
ここでは勅使川原三郎特集プログラムが行われます。ドローイング展、
6面に構成された3D映像作品展、
ダンス作品公演「青い目の男」(シアターX初演)、
ダンス作品「鏡と音楽」、などの4つのプログラムで構成されています。
全体を同時に、あるいは交互に発表できる内容は充実していて
とても楽しみです。
ドローイングや3D映像、大小のダンス作品上演、
こういう表現ができるのは、アパラタスの成果ではないだろうかと
私たちは考えています。アパラタスの小さな劇場での充実したダンスや
そのステージを自由に使ったドローイング展示 空中に吊った、大小の
サイズの異なる空間を自在に飛び往来する芸術、それは芸術へ向かう
精神の1つ、たわいもない試み、しかし手作業が見いだす
新たな作法、無知から技術へという知的冒険。
そんな旅をもうすこしつづけます。
私たちは今月末に帰国しまして、アップデートダンス41「AND」を
アパラタスで、「白痴」をシアターXで公演します。
また近々書きます。 2016/11/14 勅使川原三郎
[メールマガジンNo.628より]
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