「SHE」
7年前に初演した「SHE」が海外公演を経て、
今回のアパラタスでの再演はとてもうれしいことです。
作品は成長し、私はその成果に最高の讃美を与えることを躊躇しません。
しかし美辞麗句では済まない、収まらないものを私は強く感じています。
彼女の身体と精神、つまり神経と感情は、強烈にダンスにフォーカスされ、
その明解な意思は決して振り返えらず、
挑みみつづける。その態度がダンスになっている。
現在に生きる、それはあらゆる意味での問いかけと
言い換えられますが、彼女は恐ろしさから逃げず、
恐ろしさを求めて止みません。安易な同意や納得の反対側で
万全の準備をしている。
私が佐東利穂子のダンスを見る時、目で見る以上に
皮膚で触れるのを感じます。身体を耳や背中で、
全身で心臓で感じます。彼女のダンスがもつ力は
特別な次元にあります。彼女は強烈に実在しているということです。
今回の「SHE」の再演は、佐東利穂子という新たな次元を開いたと
私は記したいと思います。ダンスが比喩になり身体が情報になり
気持ちや心が記号処理される擬似表現の反対側で、佐東利穂子は
動き踊る。佐東利穂子がもつ独特の明解さと
生命の根源的な不確かさは、常に私たちの前に「初めての美」を
表わすのです。その時、「彼女」は私の数歩先を進んでいます。
静かな歩みで。激烈な身体が変容した後にしか起きない静けさです。
2016/10/20 勅使川原三郎
[メールマガジンNo.603より]
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