2015年12月7日

 
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さて次回の公演は、12月10日から14日まで、「ある晴れた日に」と
同じく両国シアターX(カイ)において「ゴドーを待ちながら」です。
サミュエル ベケットによる演劇史上最も重要な戯曲のひとつと言われる
作品で、言葉と身体の歪んだ交差によって作られる関係性によって
ユニークな世界が現れます。
内容は、二人の男がいつ来るとも知らないゴドーという謎の人物を
まちつづけるという話です。全編の一時間を勅使川原一人の語りに
よって構成します。原作からかなり言葉を変えることによりこの
勅使川原版ならではの日本語リズムを身体的に獲得しようとしました。
シュルツ作品や「ある晴れた日に」も同様の手法を用いている録音
した語りと身体の在り方と動きがダンスになる作品です。通常の
ダンスとは異なりますが、私はこの手法に増々魅了されていて、
今後も新作を作りつづけるつもりです。
現代演劇史上、数多く上演されたこの戯曲は、もっと活き活きとした
公演が可能であると考えていますが、私は勇気と大きな喜びをもって
立ち向かいます。
作者のベケットは言語のみならず身体を強烈に注目した希有な作家
ですが、ミニマリズムの膨張と極小のオペラを目指した芸術家である
と私は考えます。減るものと増えるものとが交差するエネルギーに
劇性を与えていると言えないでしょうか。
身体の豊かさよりも貧しさに注目し、増えるのではなく減ってゆく
道程としての身体、空間という概念を極力抑え込んだ、とても
ユニークな創造者であると、私は考えます。私の内側に潜む量産する
拡張エネルギーと消失しつづける揮発性エネルギーは、常に私の芸術
創作に多大な影響を与えています。何かを実在させる為に。 

                       2015/12/07 勅使川原三郎
                          [メールマガジンNo.257より]

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