2015年11月10日

 
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パリ、シャンゼリゼ劇場での「鏡と音楽」は、大盛況、大成功
のうちに3日間の公演を終えました。2009年に新国立劇場で創作
した「鏡と音楽」はヨーロッパを中心にアメリカやアジアなど
の多くの都市で公演している作品です。3年前に同じパリの国立
シャイヨー劇場でフランス初演したのですが、今回はシャンゼ
リゼ劇場の熱心な要望により再演することになりました。同じ
都市でこれほど期間あけずに公演することは、普通は絶対に
ありえないのですが、実際に公演が実現して素晴らしい成果を
あげたのですから、プロデューサーの手腕ということになるの
でしょう。そしてやはりKARASはヨーロッパ、特にフランス、
パリで多大に支持されていることの証と言っても大げさでは
ありません。
 
作品は初演からの良い変遷を経て強く成長しました。教育プロ
ジェクト「空気のダンス」公演から育ったメンバーの4人が、
参加した初演からメンバーも入れ替わり、作品としても成長し
た大人のダンス作品になったと言えます。半数が入れ替わった
後の作品がいまだに活き活きしてダイナミックで、そして深い
内容が客席までに届くのは、初演時から変わらない確固たる構
成が柱にあるからだと言えるでしょう。作品は年々経験を重ね
るごとに成長するものです。人間の成長のように内側が成長す
るのです。作品(内容)は常に生きる生命のようなものです。
充実した内側の働きがなければ、外側には決して良いものは表
れません。それは一人にダンサーでも、グループ全体としても、
作品としても同様です。その意味で今回のパリでの再演の成功
は意味深いと感じています。日々の小さな積み重ねが、ある時、
なにかしらの成果を表す。そういうことの不断の歩みが基盤で
あることも再確認した公演でした。誇大宣伝した催しでは決し
て有り得ない地道な確かさです。
今回のツアーはまだ続きます。ハンガリーで「オブセッション」
を、フランスに戻り「エクリプス」を公演してまわります。
11月に入りヨーロッパの気候は穏やかになりました。落ち葉が
カサカサ音を立てて軽やかに追いかけっこをしています。 

                       2015/11/10 勅使川原三郎
                          [メールマガジンNo.245より]

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