今日はシアターXでの「ある晴れた日に」の初日でした。
この作品はポーランドで初演したものですが、作品内容を大幅に
変更しました。全体をとおしてのテーマである長雨は変えず、
加えてガルシア マルケスの短編「マコンドに降る雨を見たイザ
ベルの独白」からテキストを引用して、佐東利穂子の語りを基調にした
ダンス作品になりました。この語りが全体の構成の主軸になる手法は、
シアターXで連続公演しているブルーノ シュルツ原作の作品群と同様に、
ある種の劇性をもちこむことを目指しています。
マルケスの死に対する人間のおののきや驚きが重要な柱ですが、やはり
その中にシュルツが描く空間性や柔軟な視線を私自身が見いだす作品に
なっていると考えます。
出演は、3日前まで「ペレアスとメリザンド」を踊っていた佐東利穂子、
来週「ゴドーを待ちながら」をやる勅使川原、成長著しい鰐川枝里、
独特の身体感覚の加藤梨花です。
私はこの風変わりな作品がとても好きです。まさに生まれたばかりの、
少しよじれた口調になりますが、何度目かの生まれ変わりの誕生が、
公演によって実現したとでも言い換えてみましょう。
ダンスであることから決して離れることのない身体があります。
上演と共に作品はより良くなり成長します。
「生命を得た骨格は、人の手をかりない人形のように不安定こそ特徴の
厄介な自由を技術にまで高めてこそ、ダンスは活き活きと人の手に戻ってくる。」
これは私の言葉ですが、ダンス作品「ある晴れた日に」がご覧くださる
皆さんの手元に届くと期待しています。
作品のラストの方で踊るのは、サラ ボーンが歌う「ラバース コンチェルト」で、
以前からいつか踊りたいと考えていた曲です。
本当に私たちは幸せ者です。自由に創作したこの作品は、
今後もヨーロッパ、アメリカの各地での上演は充分に可能です。
今日は2日目、公演を重ねて私たちは作品と共に成長します。
2015/12/04 勅使川原三郎
[メールマガジンNo.254より]