時々日記 2025.07.06

一昨日に新作「電気の夢」公演の全10回を終えた私たちは、次の作品
「静か」の準備に向かい始めています。
4月末から5月にかけての新作デュエット「骨と空気」は、自作の随筆
集「骨と空気」から発想した自分の中心線というか背骨を貫くような
作品でした。次の佐東利穂子のソロ「悲しみのハリー」は再演ですが、
新作を立ち上げたような鮮烈な美しい作品になりました。初の10公演
は、ソロダンサーにとり身も心も削る熾烈な経験だったはずです。
そして「電気の夢」には、独特の世界観が基調にありました。公演後、
私は新たな作品構成上にある種の予兆を感じています。ここから何かが
生まれるような、いままでに見たことがないような不明なものに導かれ
るのか、導くのか定かではないのですが、象徴性ということかも知れま
せん。面白い世界へ向かい始めている期待と奇妙な魅力的な悲哀か、
遠くへと遠くからが交差するような、溶け合う一体感、分断ではない
非権力的な統一感、今はなにと表せない内側の動き、などなど。
「静か」は全編が無音の作品です。再演ではありますが、過去から遠く
離れてなかなか近づけない今であり、ここに居つづける遠さ、時間的
距離、いや時間が無い距離、無音という音、価値を失うこと、、、
丁寧に、静か、に、なにかが近づいて遠のいていくデュエット。
ご来場いただけたら幸いです。
勅使川原三郎

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